トヨタ スープラ(A90)試乗記。BMWの血はどれほど流れているのか?

17年ぶりに復活したトヨタ スープラに歓喜した人は少なくないだろう。スカイライン GT-Rと同様に2002年に販売を終了し、その後ワイルドスピードと言った映画のみならずレースゲームでは欠かすことのできない代表的な日本車スポーツカーで在り続けたのだ。復活を望む声はずっとあっただろうが、現在の市況においてスポーツカーを販売すること自体大きなリスクであることは間違いなかっただろう。

そんな中BMWと手を組んでスープラが作られるという報道が出始め、2016年には世界各地でスパイショットが撮られるようになる。BMWと共同で開発をするとのことで、どのようなスープラへ仕上がるのかこれも誰もが様々な予想を膨らませたことだろう。実際に2019年に登場したスープラは、先代と同様に直列6気筒エンジンを搭載し、グラマラスなボディデザインを持ってデビューを果たし、多くのファンの期待に答えた結果となった。

Mk5 トヨタスープラについて

メカニズムとしては、BMWのZ4と多くの部分を共有しているのだが、このZ4もスープラとの共同開発がなければBMWのラインナップからリストラされてしまっていたということで、トヨタとBMWのコラボレーションが双方にとって利益のあるものだったことが伺える。エンジンは、直列6気筒エンジンを搭載するグレードに加え、スープラとしては初めてとなる直列4気筒エンジンを搭載する廉価グレードも存在する。パワーユニットについてはいずれもBMW製となっている。組み合わされるトランスミッションは、ZF製の8速AT「8HP」が搭載されていたが、2022年にはマニュアルトランスミッションを搭載するモデルもラインナップへ加えられた。

ボディは86の2.5倍ものの剛性、あのレクサス LFAすらも超えるという剛性が与えられたというから驚きだ。足回りの味付けについてはトヨタとBMWそれぞれのモデルに対し、別々に開発がされている。

Mk5 トヨタスープラを試乗してみて

今回ドライブしたのは、6気筒エンジンを搭載しているモデルだ。実際に乗り込んでみてまず感じたのは、計器類やモニターなどの統一感のあるデジタルなインターフェースだ。前に乗っていた人の設定がそのままなので、まずそれをできるだけデフォルトの状態へ操作をする。例えば、オーディオの設定だが、イコライザーで低音をかなり効かせた設定となっていたために、インテリアのパネル類も一緒に振動しビビリ音を発生していたのがまず気になってしまったことは余談だ。

タンパーの硬さや、エグゾーストシステムの音量、さらにトランスミッションの変速モードなどそれぞれの設定ができることを確認し、すべて標準モードにしてから走り出してみる。

走り出した瞬間に驚いたのは、ZF製トランスミッションのあまりの変速スピードの早さである。スポーツモデルであれば、DCTでないとダイレクト感に欠けるといった意見も散見されるが、このトランスミッションはトルクコンバーター式である。トルコンであることの前情報があったからかもしれないが、想像を遥かに超えるダイレクト感と変速スピードに驚いてしまい、思わずトランスミッションのモードをマニュアルモードにして色々試してみたくなるほどだ。

肝心な乗り味については、さすがはBMWといった雰囲気を感じさせる。50:50の前後重量配分といった要素もあるのだろうが、加えた舵に対して俊敏なレスポンスで反応が帰ってくる。コーナリングの進入時には大きな味方となってくれるポイントだ。コーナリング時の安定感についてはリアのグリップレベルを感じ取ることがやや難しいと感じさせるところ。旋回中にアクセルを踏み増していくには若干の恐怖が伴う。

直進安定性については、先述したようにハンドルの操作に敏感さがあるため、長距離のロングドライブとなるとすこし疲れてしまう側面があることは否めない。このスープラの楽しさは、やはりコーナリングの俊敏さのようなところにあるのだろう。

エキゾーストノートは、ターボエンジンであることもあり、遠くに抜けるような音質ではないが、スポーツモードにしたときは、意図的にアフターファイヤーを起こすバブリングを純正状態でこれなのかというほど起こることは驚きであった。これは確かにその気にさせるサウンドである。