スバル WRX STI tS TYPE RA試乗記。STIが生み出した走り特化の究極のWRX
2007年に、東京モーターショーで日産 GT-Rや三菱 ランサーエボリューションなどと共にお披露目されたのが、GRB型のスバル インプレッサ WRXだ。280馬力というエンジン出力の自主規制を突破し、308馬力というパワーを手にしたことで、ついに日本車達が世界レベルに挑戦していくぞという勢いを強く感じたことを覚えている。
これまでセダンタイプであったインプレッサ WRXが、ハッチバックのみのラインナップとなったことも大きな変化の1つだった。当時は否定的に捉える意見も少なくなかったように記憶しているが、WRCというシーンなどで戦うこと意識した上での選択であれば、大した問題でもないと感じたことも記憶している。
実際にデビュー当時に初めて実車を細かく見たときは、各部に進化の軌跡を感じることができ、興奮したものだ。見た目の第一印象では、あのインプレッサが4本出しのマフラーになったということや、フェンダーの張り出しなど、車好きとして心をくすぐられるポイントが多くあった。
スバル WRX STI tS TYPE RAについて
スバル WRX STI tS TYPE RAは、STIが送り出した限定のコンプリートカーの1つである。GRB/GRV型では、様々なSTIによる限定のコンプリートカーが用意され、ベクトルは異なるもののそれぞれにWRXの特徴をより洗練させた魅力的なモデルとなっている。
実際にドライブした tS TYPE RAというモデルは、WRXの競技モデルのベースとして用意されるspecCをベースにより走りに特化させたモデルなのだ。極めて特徴的なのは、ステアリングギア比を標準モデルの13:1から11:1へ変更され、よりクイックなステアリングを実現している。
足回りも、STIによる専用チューニングがされたサスペンション、そして6podのブレンボ製のキャリパーとディスクが強力なストッピングパワーを生み出す。ホイールはブラックに塗装された鍛造のBBS製ホイール、組み合わされるタイヤはブリジストンのポテンザ RE070となる。このタイヤもSTIのコンプリートカーのために専用のチューニングが加えられた特別なタイヤなのだ。
スバル WRX STI tS TYPE RAをドライブ
実のところ、素のスバル インプレッサ WRXもドライブの経験があるのだが、こちらではts TYPE RAに限ったドライブの詳細を語っていきたいと思う。エンジンのチューニングはこのモデルでは加えられていないので、そちらのインプレッションについては標準モデルと同様ということで受け取っても問題ないはずだ。
実際にドライブしたのは、ts TYPE RAの中でもNBR CHALLENGE PACKAGEと呼ばれる、ドライカーボン製のウィングやBBS製ホイール、RECARO製のシートを装備したモデルとなる。見た目からしてやる気満々なルックスなのだが、やはり横切る人たちからの注目も浴びることも事実だ。
車に乗り込んでしまえば通常のWRX STIと全く同様の景色だ。スペックCをベースにしていることから、サイドウィンドウが薄くなっていることに、特別感を感じさせる。
エンジンフィールはスバルのボクサーエンジンといってしまえばそれだけなのだが、308馬力というパワーは迫力満点だ。これがFRのような後輪駆動モデルであると、アクセルを全開にすることを躊躇する部分もあるのだが、WRXは4輪駆動なので全く気にすること無く踏み込める。
こちらもスペックC譲りのボールベアリングタービンを搭載しているのだが、3000回転ぐらいから湧き上がるパワーはターボのそれといっていいだろう。EJ20という生まれながらな高回転ユニットとの相性もあり、8000回転まで軽々とフケ上がる演出はやはり名機と言わざるおえないポイントだろう。
少し路面が悪いところで全開にすれば、若干ながらトラクションコントロールの介入がされるのだが、やはり四輪駆動であることの安心感は絶筆しがたい。そして標準モデルよりクイックとなったステアリングだが、機敏さによるストレスは皆無で、むしろこれが普通でいいのではと感じるほどの自然さである。
ロックトゥロックは2.1回転程度と、クイックであることは間違いないのだが、高速道路などでの直進時に機敏さが邪魔となるシーンは無かった。それ以上に足回りが秀逸なのもしれないが、こちらも硬いと表現すればそれまでなのだろうが、硬さの中にしなやかさ、しっとりさを感じるので不快に感じるシーンは皆無だ。決してゴツンとくる入力は無く、しっとりとドスンという入力に変化された上で体に感じている印象だ。コーナリング時の粘り方も、RE070のハイグリップさや剛性感なども相まって、破綻することを全く気にする必要が無い。コーナリング時の速度さえ間違えなければ、全く怖さが存在しないドライビングフィールなのだ。